フリーの統計ソフト jamovi は使えるのか

普段より仕事で統計ソフトを使うことが多いのですが、最近フリーの統計ソフトを調べていてjamoviという
GUIベースの統計処理ソフトを見つけましたのでご紹介です。実際にダウンロードして使ってみたので
少々サマリーしてみます。

本ブログでは「心理尺度開発ツールをR Shinyで作ってみる」シリーズも始めてますので、ご興味のある方はそちらもご参照ください。

統計ソフトといえばRですね

フリーの統計ソフトといえばまず、「R」ですね。ベースのソフトに加えて、様々なライブラリーが作られているので世の中にある
統計計算は論文ベースの「尖った」計算でもできることが多いです。

一方で、機械学習系のライブラリーはPythonに一歩譲るところであり、また、メモリー上で計算を行うので、メモリーに載らないようなデータを
扱うためにはチョット不便です。とはいえ、一般的な計算は概ねこれ一本で十分なので、使われている方も多いかと思います。

Rはもともとコマンドベースの計算ソフトから発展してきているので、UI的な仕掛けはかなり弱く統計初心者にはチョットとりつきにくいソフトとなっています。
実際Rだけを起動すると、次に何をやったら良いか戸惑います。

そこで、Rコマンダー(Rcmdr)といったRにGUIの要素をラップするライブラリーも作られていますので、これを導入すれば多少はとりつきやすくなります。日本語マニュアルなども検索すれば出てきますので使う分には初心者でもいけると思います。
ただし、そもそもコマンドラインがベースなのでネイティブにUI/UXを意識したSPSS的なソフトと比べるとまだまだといったところです。

jamoviとは

jamoviはRをベースとした統計計算ソフトですが、ネイティブのGUIソフトのような見栄えと動きが特徴です。
2019年5月にバージョン1.0がリリースされたばかりのフレッシュマンです。

以下のjamoviのサイトのdownloadからダウンロードできます。solid版とcurrent版がありますが、solid版の方が安定したバージョンですので一般的にはこちらが良いかと思います。

jamoviを立ち上げてみる

jamoviを立ち上げると以下のような画面が現れます。見かけはSPSSにそっくりです。

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データを読み込んでみる

実際にデータを読み込んでみます。
試しのデータとして、Rpsychパッケージに入っているbfiデータを使いました。
データは以下のように操作すると取り出せます。保存先のファイル名”bfi.csv”はデスクトップに場所を指定するなどすると取り出しやすいです。

library(psych)
data(bfi)
write.table(bfi, "bfi.csv", sep=",", row.names=F)

このデータの意味については例えば以下のサイトをご参照ください。

このCSVデータをjamovi画面の左上のハンバーガーボダンでOPENしてみるとうまくデータが読み込まれました。

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分析のメニューは大きく全部で6種類あるようです。

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試しに一つやってみる

メニューの中からT-testsIndependent Samples T-Testを選んでみました。

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メニューがかなり豊富にありますね。効果量(Effect Size)なんかも計算してくれるようでいい感じです。

ためしに、ウイルコクソン順位和検定(Mann-Whittey U)をやってみた結果です。

いろいろとオプションがあって、等分散の検定や正規性の検定結果も選べます。このオプションボタンを押すたびに
リアルタイムで計算結果が変化していくので見ていて面白いです。これなら試行錯誤しながらの分析には最適な印象です。

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将来性について

jamoviのUIやUXのイメージはとても使いやすく、項目を選択するとすぐに反映されることからとても使いやすいのではないかと感じました。
ただし一方で、項目変えるたびに計算が始まるのでややこしい計算をやらせると画面表示にもたつく可能性があるのではという点が気になります。

また、社会科学分野を念頭に置いて開発されているようで、因子分析や回帰分析などはメニューに搭載されているものの、特殊な計算はまだ少ない印象です。
このあたりはjamovi libraryとして開発が進んでいるようですので今後メニューが増えてくるかもしれませんのでそちらに期待です。

最後に

ここまでUIが使いやすくなっても、メニューのなかからどれを選んで実行したら良いのか?、どの手順で実行すれば良いのか?、といった点のアドバイス的なことは出てこないので、最終的にjamoviを使いこなすには分析を行う人のセンスと知識が問われます。このあたりのギャップを解消できないかしら・・・というのが「心理尺度開発ツールをR Shinyで作ってみる」シリーズの一つの目標です。